研究のヒホ

神経生理の研究に四苦八苦するブログ

フリームービング電気生理測定方法の調査

 ECoGとEMGからREM睡眠を判定する方法はわかりました。
 筋電(EMG)と脳表EEGからマウスのREM睡眠期間を判断する方法の調査(1) - 研究のヒホ
 筋電(EMG)と脳表EEGからマウスのREM睡眠期間を判断する方法の調査(3) - 研究のヒホ

 いざ実験してみましたが、自由行動下のマウスが思ったより動かず、あまりきれいな測定ができていないようでした。電気信号を送るリード線が重そうなこと、リード線装着時にマウスに負担をかけてしまうことなどが原因かもしれません。更には、リード線と測定電極の間で断線したり、よくわからないハムノイズが生じるなどの問題が発生しました。
 私の研究室では、事象関連電位(event-related potential, ERP)のように自由行動下でLTPを測定されていた方が居て、私はその方の方針を真似ていました。しかし今は特に刺激を与えず、より自然に近い形で脳波測定を行いたいので、マウスがより自然体になれるような系を組み立てる必要があるようです。
 そこで、フリームービングで電気生理学的手法を用いた測定、中でもLFPや脳波測定をしている論文の、測定をきれいにするコツを調査してみました。

マウスにアンプを搭載する

Instrumentation amplifiers, built in the female connector (16 channels), were used to reduce cable movement artifacts.
Buzsáki, G., et al.(2003)*1

 ブザッキーさんがファーストオーサーで、運動中のときとREM睡眠のときとSWSのときのLFPを比較している論文です。ここで何倍にしているのかわかりませんが、マウスが自由に行動できるほど軽いものなようです。すごい。
 ちなみに引用を辿って行くと、この辺(Buzsaki, G., et al.(1989)*2 )の論文でそのプレアンプの詳細がわかりそうです。TLC27L4BCD・・・普通のオペアンプなようですね、一度挑戦してみたいところです。
 ちなみに同じく引用を辿ると、どうやらホイールは自作なようです。

The running wheel (10 cm wide, 29.5 cm in diameter), made from stainless steel wire mesh, was attached to the side of the box through a 29.5 cm diameter opening.
Czurkó, András, et al.(1999)*3

11ヶ所のLFPを同時記録

Using this expanded approach we were able to isolate up to 70 single neurons and record local field potential (LFP) activity simultaneously across 11 brain areas.
Dzirasa, Kafui, et al.(2011)*4

 Journal of Neuroscience Methodsです。回路の細かい図などは書かれていませんでしたが、リード線がつながっているマウスの写真が掲載されています。小さいです。ヘッドステージアンプ搭載でもこんなに小さくできるもんなんですね。
 Figure1のBの図を見てみると、折った電極に直接セメントを付けている様子がわかります。なるほど、このセメントを摘めば、大きいガイドを用意しなくても良さそうです。ただこの場合、電極とリード線をつなぐときに電極の位置がずれそうで怖いのですが、どうしてるのでしょうか・・・。
 ちなみに本文中に、体重の10%ぐらいならインプラントしても許容できると書かれていました。

The total weight of the implant was 2.2 g, and we found that mice could tolerate implants that weighed up to 10% of their free feeding body weight.

ヘッドステージ(プレアンプ)無しでも可能?

Absolute values were normalized to the total power of the spectrum and to the mean basal value (set at 1). Lepousez, Gabriel, et al.(2010)*5

 JNメソッドです。
 ヘッドステージについて特に言及しておらず、カニューラと電極4本だけを刺しているんだと思われます。ヘッドステージなしでもそれなりに記録はできるということでしょうか。・・・なんで参照電極が2本いるんだろう。あとグラウンドはどうしてるんだろう。
 それと、メソッドに書いてある通り、スペクトラムを全体のパワーの平均で正規化しているようです。たまに見かけますが、これってやっちゃっていいんでしょうか。うーん。

術後は数日の回復期間をもたせ、チャンバーを付けた後も慣らし期間を設ける

One week after surgery, animals were treated during 2 consecutive days with a single (i.p.) injection of tamoxifen (100 mL, 10 mg/mL). Recording sessions were performed 3 d after the second injection. Animals were first habituated in individual recording chambers for 48 h under standard temperature and light/dark cycle conditions.
Lee, Hosuk Sean, et al.(2014)*6

 回復期間の間ずっと記録用のリード線がついているのか、実験前に付けるのかが知りたかったんです。回復期間の後にチャンバー付けて更に数日慣らしているようです。なるほど。
 ちなみにこの方々もヘッドステージを搭載しています。あったほうが良さそうです。


 とりあえずもっと軽いリード線を使ってみて、リード線装着後に数日間慣らしてみようと思います。あと時間があればヘッドステージも考えたいです。

*1:Buzsáki, G., et al. "Hippocampal network patterns of activity in the mouse." Neuroscience 116.1 (2003): 201-211.

*2:Buzsaki, G., et al. "Multisite recording of brain field potentials and unit activity in freely moving rats." Journal of neuroscience methods 28.3 (1989): 209-217.

*3:Czurkó, András, et al. "Sustained activation of hippocampal pyramidal cells by ‘space clamping'in a running wheel." European Journal of Neuroscience 11.1 (1999): 344-352.

*4:Dzirasa, Kafui, et al. "Chronic in vivo multi-circuit neurophysiological recordings in mice." Journal of neuroscience methods 195.1 (2011): 36-46.

*5:Lepousez, Gabriel, et al. "Somatostatin contributes to in vivo gamma oscillation modulation and odor discrimination in the olfactory bulb." The Journal of Neuroscience 30.3 (2010): 870-875.

*6:Lee, Hosuk Sean, et al. "Astrocytes contribute to gamma oscillations and recognition memory." Proceedings of the National Academy of Sciences 111.32 (2014): E3343-E3352.